【書評】「頑張れなくさせるもの」を振り切って、全力で走れ!「天才はあきらめた」

南海キャンディーズの山ちゃん著の「天才はあきらめた」を読んだ。山ちゃんのこれまでの芸人人生を綴った自叙伝だ。

芸人を目指すことになった幼少期の体験から売れまくるまでとその苦悩が赤裸々に描かれている。自分の中の天才像に近づけるように本物の天才になれるように天才を演じ続けてきた山ちゃん。

そんな彼が努力の果てに自分は天才ではないと認め、それを受け入れた上で努力し続けることが憧れの天才の景色を見れるチャンスをつかむ方法だったと話す。

僕はファンとまでは言わないけど不毛な議論をたまに聞いたり、テラスハウスでのコメントを楽しみにしたりする程度に山ちゃんは好きだ。

少しは彼のことを知っていた気になっていたけど本書に出てくる彼は僕が思っていた人間とは少し違っていた。僕は山ちゃんをネガティブなダメ人間だと思っていた。今思えばそんな人があそこまでブレイクできるわけはないのだろうけど、そう思っていた。

そんなことはなかった。むしろ怒りや嫉妬というネガティブな感情を燃料に死ぬほど努力できるめちゃめちゃポジティブな人間。「頑張れなくさせるもの」を振り切り努力しない理由をなくすことでブレイクした今なお走り続けられる圧倒的な努力家。ダメ人間であることは間違いなかった。

嫉妬の炎にガンガン薪をくべる

一番調子乗ってることを言ってる奴をぶっ倒すためには、どの努力をしなくちゃいけないかを考える。イライラを使って、とりあえずムカついてるときにやることをたくさん決める。そしてそれをメモに取る。やるべきことと、そのきっかけとなったムカつく奴の言葉を一緒に、すぐそれに取り掛かる。そうすれば勝てるし、ムカつく奴も僕の餌になってくれたということで怒りが収まる。僕の中のクズとの最高の付き合い方だった。

山ちゃんの努力できる1番の原動力はネガティブな感情である。自分よりも評価の高かった芸人への嫉妬心や不当な点数をつけた審査員への復讐心など。

他人への嫉妬心や劣等感が芽生えた時、難癖をつけて無理やり自分を肯定してしまう時がある。自分は負けているわけではないと。相手の悪いところを探してしまう。あるいはへこんでしょうがないと思ってしまう。このように自分を肯定する行為に良いことは一つもない。ただ努力しない理由を見つけることになるからだ。

しかしこう思ってしまうことは仕方がないこと。だからこそすぐにそれに気づいて、気づいた自分を褒めてあげる。そしてそのネガティブな感情を有効利用する。

確かに悔しさとか劣等感などのネガティブな感情は感じたその瞬間、自分をものすごく奮い立たせてくれる。けど時間が経つとだんだん味がしなくなってこないだろうか。モチベーションが下がってくる。海外旅行から帰った時全く英語がわからなかった経験から「絶対英語喋れるようになってやる」と息巻くものの3日と勉強が続かないあの感じ。ほかにやることを見つけて努力しない理由を見つけてしまう。

そうならないのが山ちゃんのすごいところだと思う。本書を読んでいるとネガティブな感情を力に変換する行為含め山ちゃんは自分の性格をよく理解していてどう考えたら自分は努力できるかが分かっているんだなぁと感じる

「モチベーションが上がらない」は普通

努力し続けられる理由の一つにこう書いてある

そもそもモチベーションなんて上がっていないのが普通なのだ。モチベーションが上がっている状態っていうのは、あの国民的兄弟キャラのゲームの中で言うとスターを取っている状態。ただのラッキーで、モチベーションが下がってる状態が通常なんだから、常として頑張らないといけない。そう考えるとサボる数は減った。

なかなかやるべきことに手をつけられない時「今はモチベーションが上がってないから」と言い訳をしてしまったことは誰にでもあると思う。しかし思い返してみると「モチベーションが上がっている時」なんてほとんどない。

「そもそもモチベーションなんて上がっていないのが普通」というのを聞いて以前読んだ下の記事を思い出した。

読むのめんどい人のために要約すると、そもそも「やる気」なんてものは存在しない。行動を起こすから「やる気」が出てくる。面倒なときほどあれこれ考えずに、さっさと始めてしまえ。って感じの記事です。

だから「モチベーションがない」「やる気がない」なんてものは誰でもそうで、頑張らない理由にしてはいけない。むしろ「モチベーションをあげるため」「やる気を出すため」にとりあえず行動してみるしかないんだと思う。

退路を断つ

読んでいると「退路」というワードがよく出てくる。自らを「僕は根性がない」と話す山ちゃんが努力し続けられる理由のもう一つに「退路を断つ」がある。

養成所に入るきっかけとなったのもこの「退路を断っていた」ことだった。千葉出身の山ちゃんが関西大学を志望した理由は大阪生活のスタートと同時に養成所に入るためだった。しかし誘惑が多く楽しい大学生活。気づけば養成所に入らぬまま大学2回生に。

このまま就職でも悪くないかなと思っていた時、退路を塞いでくれたのは寮の自己紹介でした「僕は芸人になるために、ここ関西大学にやってきました」だった。宣言してしまったプレッシャーと人との出会いで正式に芸人を目指すことになる。

山ちゃんが売れたあと南海キャンディーズとして再びMー1を目指すことになった時も退路を断っていた。しずちゃんにM-1に出たいという意思があることを知っていた。しかしすでに売れて満足のいく仕事ができてる状態。そんな中でのMー1のネタ作りとネタ合わせに振り切れなかった。M-1で爆笑をとる同期へを見てM-1出場への気持ちが高まった時、深夜ラジオの不毛な議論でMー1に出ることを宣言したのだ。

退路を断つことは勇気がいる。もし何者にもなれなかったら恥ずかしい思いをするからだ。退路を断たずに逃げ道を作っておくことは楽だ。思うように成果が出なかった時の言い訳になるから。

しかし逃げ道が常にある状態は自分に言い訳ができる分中途半端な結果に終わってしまうことがある。振り切ることが難しくなる。逃げ道があることで精一杯できる人もいるだろうけど、山ちゃんはその逆なのだろう。自分を追い込むことで進み続けられるタイプ。僕も全く同じタイプなので退路を断てる人間に憧れる。なかなかできない。

新しいタイプの自己啓発

本書は自己啓発本としても相当良いんじゃないかなぁと思う。ゴールを設定してそこに向かって正しい努力をする。山ちゃんがやってきたことは概ねそんなことだ。ただその努力の仕方が独特なだけである。

僕はいつも自分にこう言い聞かせている。自分を「頑張れなくさせるもの」を振り切って、全力で走れ!そんなものからは、逃げて逃げて逃げまくれ!そのためのガソリンとして、自分が味わった苦しい感情を全部使え!嫌いな奴を燃料にして、脳内で圧倒的な勝利を摑め!

ダメな自分から逃げていたら結果的に目標にたどり着いてる。そんなイメージだ。圧倒的な努力をすることで天才のような景色が見れることがある。ネガティブな人間にはその辺の自己啓発本読むよりもよっぽど刺さる内容になっている。